四畳半の住人 / 四畳半、たまに考える / 「黒潮祭り」で見た日本の将来

■■ 「黒潮祭り」で見た日本の将来 ■■
作者:四畳半の住人 -
- 8月3日は近所の商店街主催の「黒潮まつり」の日。参加資格は、小学生以下の子供達。商店街に特設された生簀で、生きて泳ぐ鯵、鯛、平目を網を使ってすくいとるという楽しそうなイベント。去年は見れなかったが、4時からだと言うので、今年は梅を干した後にちょっと出掛けてみた。3時すぎに様子を見に行くと、丁度、生簀を設置し、海水を入れている最中。並んで待っている子供もいる。準備は、あちこちのお店では馴染みの顔が集まり進めていた。海水が溜まり、魚が放されると、子供たちの歓声もあがり、とても賑やか。そろそろ開始なのかな。役員の方々は、並び始めた行列の整理、人数確認、網の準備など、細々した準備もお互いを屋号で呼び合い素晴らしい連携プレイ。
 「黒潮まつり」のチラシによると、ルールは、  
 小耳にはさんだ情報では、鯵は240匹、鯛、平目は50匹も準備したそうだ。って事は、単純計算しても120人+50人=合計170人分だ。行列の後ろの方までは充分にありそうだ。 入れ替え制なので、生簀には、何度かに分けて魚を放す準備がしてある。特設生簀の奥のバケツには鯛や鯵が暴れて出番を待つ。特設生け簀の深さは、約30センチで、子供たちが縁に手をかけても壊れないように木を渡して補強してある。水飛沫をあげて泳ぐ魚に並んで待つ子供たちは、わくわくしているのが見てわかる。私も楽しみに開始時間を待った。
 先頭の子供達から網が渡され、時間通りにいよいよ始まった。わ〜と子供たちの歓声が上がる。待っている行列もさらに賑やかになった。私もカメラを構えていい構図を待つ。

しかし、ファインダー越しに見えたのは信じられない光景だった。

- 付添の大人が、狂ったように鯛や平目を追いかけている。子供の手は最初は添えられているが、そのうち離れ、大人が持つ網が他の子供の網をけ散らして、平目を追いかける。これが、手助けか?手助けするなら、2匹まで取れる鯵を狙うべきじゃないのか。鯛&平目は1匹で終わりなのだ。左は、行列のほぼ先頭で待っていた親子。平目をすくった時には子供は後ろにいました。子供のちょっと不服そうな顔と母親の笑顔がとても対照的。
-

うちも負けずに盗るわよ!
うちは2人分だから、
鯛と平目を順番にゲットぉ〜〜!
(子供、やる気失せた模様)
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その平目、横取り!とりゃぁ!
平目を隅に寄せていた子供はぼーぜん。
(あんた、手をつっこんでないかい)
こちらは正しい弱肉強食の世界。
これは見ていて楽しい。

ここで、皆さんは、「ったくおばさんはしょうがねぇなぁ、、」と思うでしょ

ところが、、お父さんはもっとえげつない

- -
右の小学生2人、いまだバトル中。
が・・・
二人で追い詰めた鯛は
子供に持たせたビニール袋に消えました。
2人分目は、生簀を周り
こちら側で2匹目の鯛。
(子供はどこいった?)
さすがに高学年の男の子はがんばるが、大人のリーチには適わない。
腹立たしく思いながらさらに見ていると、
バケツまで突っ込んでいる大人。それはあまりにも違反だろう。

そこまでして採った魚。袋に入れるのは役員まかせ。

(水ぐらい自分でいれたら?)
(って言うか、普通、バケツ持ってくるんじゃないの? 魚屋じゃないんだからさ)
鯵、平目がいなくなると、少しは大人の手が減る。

やっと鯵をすくった子供にもおかしいのがいる。
生け簀の上で網をかざして無言で係員のバケツを待つだけの子供。
「取れた、取れた」と人を呼び、何もしないで待つ子供。

(君は、生け簀の外に出したり、地面に置いたりとか、考えられないのか?)
(ゲーム脳ってやつか?)

役員は足りず、当然、生きがいい魚は、網から逃げる。
それを見ている親も何もしない。

(手を出しすぎと、他人任せの両極端の人種がいるらしい)

子供を外で待たせて何度も見かけるおじいさん。バケツには鯛&平目&鯵がお揃い。

(あなた、さっきも入ってなかったか?)
(そんなに目立つアロハ着て、そりゃないよ)

順番待ちしている行列からは、「鯛や平目がなくなっちゃう」。と大人の声が聞こえる。

(こらこら、、あんた達がすくうんじゃないよ)

どうやら、最近の親は、子供に生け捕りの体験をさせるよりも、
食卓に1匹の鯛&平目を食卓にのせたいらしい。

鯛なんて買っても2000円もしないのになぁ。
生捕り体験の方がきっと高いんじゃないか。
まして、「黒潮まつり」は参加費無料でせっかくのいい機会なのに。

子供に文句を言わせない親なのだろうが、子供も子供だ。

それでいいのか。君たちは悔しくないのか?

もちろん、手出しをしないで子供ががんばっている親子もある。
不器用にすくった鯵を歓声をあげて自分でバケツに入れようとする子供もいるが、
どうしても恥ずかしい大人が目立つ。そういう家族に限って「ありがとう」も言えない。
レンズ越しでは、浅ましさだけが強調され、見ている私の気分が悪くなる。フィルムが勿体なかったな。
鳥瞰図で見ていて、日本の将来はやっぱり暗いのか、、と思う。
手出しをしすぎる親に、いいなりの子供。
誰かがバケツを持って魚を入れてくれるまで何もできない子供。
商店街の善意に対して、「ありがとう」が言えない親子。

全部じゃないが、目立つほどいるとはどういう事だ。

それにしても、こういう家族は商店街で買物しないで大型スーパーに行くんだろうね。
でなきゃ、顔なじみの役員の前でこの醜態はないだろう。
こういう人達って、きっと、このイベントでいい事あったからこの商店街で買物しようなんてまったく思わないのだろうね。良くしてあげてもなんのリターンもないって奴だよ。最近、そういう人が多いから、コンビニとか大型スーパーが流行る。

私は未婚で子供もいないので、養う生活の大変さはわからない。
しかし、この豊かな現在の日本で、1年に一度のイベントで子供から網を取り上げるほど、生活は苦しいものなのか。もし、本当にそうなら大問題だ。
- もちろんこんな人達ばかりではない。
 写真は、最後までバトルして大きい魚を追いかけたが残念だった小学一年生の男の子。悔しかったみたいだが、自分だけの力ですくった魚に大喜び。いい笑顔だ。
 お出掛けの帰りで、お母さんが急遽100円ショップでバケツを買っての参加。
(せっかく生きているんだからバケツで持ち帰りたいよね)
 彼は、元気に泳ぐ鯵を見て、
「これ飼ってもいい?」
可愛いねぇ、、それと比べると、生きた魚をビニール袋に入れて持ち帰るのはその中身が鯛と平目だろうととても貧しい。
 ここで、気分のいいまま帰ろうかと思ったが、気になる親子が来たのでもうすこし見て行くことにした。
 お母さんに連れられた4兄弟。4人並んで網を持つ。お母さんは、さすがに4人は面倒みれず、一番小さい子の網に手を添える。兄弟のうち3人はすくいおわって残り1人を見つめて待つ。時間制限はとっくに過ぎたが、役員も鬼じゃないので、がんばってすくうまで待ってくれる。魚も減ってきて、なかなかすくえない。すくってもすぐ落としてしまう。

(いいぞ、がんばれ! そこだ!)

あっ、、すくえた!!! と思ったら、鯵が暴れて網から落ちそう。
その時!!

見ていた兄弟の網が、さっと号令をかけたように 妹の網の下に集まった。
妹の網を補助するように、そのまま生簀の外に誘導し、鯵を外に出した。
兄弟みんなで、わ〜と拍手。
なんとまぁ、、鮮やかな連携プレーを見せてもらった。
子供4人分の鯵8匹を持って帰る家族はとても楽しそう。

この感動が打ち消されないうちに引き上げる事にしよう。

2003年8月5日作成 四畳半の住人